FRP艇の自作方法
造船で選べる素材や工法は数多く、会社によっても社内の先輩によっても観点、価値観は様々で、営利を追求するなら制限も増えるでしょう。
ここではそんなことは言いません。限定することがあるとすれば
古来からの鉄則、守るべきだと思うことくらいにとどめていくつもりです。
基本は自由に、やりはじめたら続けよう、たまには一服 一息入れて気楽にまいりましょう。
昔、仕事の合間に造った船を例にして書いていきます。
自作を考えたとき 必ず必要なのが図面で、通常はきちんと設計されたものを購入するのですが、
仕事柄現尺図を描いたりバテンの使い方も知ってたので、
会社にある船をコピーしてみようという気になって取り掛かったのです。
では作業の実際を記していきます。
オリジナルの仕様は、 全長5.5m 5馬力の船外機 連休に上架、水洗いしてエンジンをはずし 知人に手伝ってもらってクレーンで船体を反転、
決めてたステーションの長さをキールにマジックでしるし 5.5mmのベニヤを5cm幅に落としたものを現場あわせでカット、
グルーガンで固定 中居君レベルの画力で申し訳ありませんが、
その様子が下図です。
ステーションの距離に決まりはありませんが、等間隔でキリのいい寸法 たとえばさしがねの50cmにします。
で、ステーションの距離を最悪忘れてしまってもフェアリングは可能なんですが
手間が増え船型も微妙に変わってしまいます。
型板のベニヤはグルーガンで留めるので、つなぎ目の貼りしろと形状的に弱くなる部分を補強するための余裕をとって、のこで切るだけです。
間違ってもかんなで削りあわせようとしないこと、というか無駄な手間をかけてはいけません
そこで簡単正確な採寸方法を下に画像で貼っていきます。
現場の再現は無理ですので机上のノートで説明します。
画像に天地を示したように 船をひっくりかえしてるのでキールが上になってます。
ひっくりかえせない場合は作業がやりにくいだけです。
センターラインはキールに1本墨を打ち、WLは船底塗料の上っ面で決められます。
塗料を塗ってない船だったら水際の汚れを目安に型板をあてるまえに船体に墨を打っておきます。 この2つの墨は必ず入れて、必ず型板にも写します。
基準を設けるための鉄則ですのでお忘れなく。
ベニヤを図のようにグルーガンでとめてRがきつくて1枚の板ではうまく添わないときは2本をへの字につなぎます。
最初の1枚や途中でとめる板は船体にグルーを点付けでとめて 作業が終わるまで動かないようにします。
先にも書いた通りベニヤの木端全体が船体に密着してなくてかまいません。
ところどころすきまが空いてるくらいがいいのですが、すきまは10mm以内におさえてください。
さしがねの幅は15mmなのですきまが12mmでも墨は書けますが、
はずして原図に起こすとき実際の墨がどこなのかわからなくなりがちです。
グルーガンで留めるときの注意点は板をむりやり押し付けて留めないで自然に置いてあてた状態で留めます。
型取りがすんで船体からはなすと、押さえつけたベニヤが元にもどろうとして正確な形状を写すことができないからです。
曲げてもいいのは、外板などの曲面にそわせて展開図の型取りをするときだけで、
墨が曲がる方向へ型板を曲げて船体へ添わせてはいけません。
クリンカー張りの貸しボートを見てまっすぐな板を曲げて貼ってるだけだろうと思ってる方が大半でしょうが、 大間違いです。
簡単にいうとS字、正確にはかもめが飛んでるシルエットに近い形です。
さしがねを使って外板の型を取ります。
下図はストライプやチャインの部分を拡大しています
鉛筆の濃い線が船体の外面、薄い線が型板のベニヤで赤い線が船体に差し金をあててけがいたもの、 船体から15mmはなれた距離のラインをベニヤ板に写してるイメージ。
ストライプの垂直部分など細かいところも忘れずに取ります。
もし忘れてたのに気づいても、一旦型をはずしてしまうと元の位置にもどすのは不可能で、
そのステーションはすべて取り直しになるでしょう。
型を取り終えると下図のようになり、板の途中で赤い線が止まって切れてるのは、
さしがねがそこまでしかないから書けないのであって書き忘れてるのではありません。
もう一度取り忘れがないかよく確認して、仮止めのグルーをはずします。
型板同士を留めるのはグルーをたっぷりつけて接着のつもりで圧着します
型をはずしたら原図場へ行って、今までと反対の作業をして板に写すと、
赤い線にさしがねをそわせ、さしがねの反対部分は船体の外面の位置に来るので理屈がわかれば簡単な作業だと思います。
この場合正面図になるのでしょうか、断面図と言ったほうがいいのか、
船を横から輪切りと言えばわかりやすいでしょうか?
センターラインから半分だけを図面に起こして描くために必要な面積が大きくないのでサブロク1枚ですみました。
全長はベニヤを何枚かつなげば5.5mを超えても描くことはできます。
しかし仕事の邪魔になるので固定はできず、 1日で終わらないし、
ばらしてかたずけ、また敷きなおすことも無理。
で、悩んだ結果 作業場の床が地面の上に耐水ベニヤを敷き詰めていたので そこへ全長5.5mの現尺図を白墨で描いてフェアリングと座標の採寸を行い
後始末はバテンやかなづち釘抜きくらいで、図はそのまま放置 人が歩いたりモノでこすれたりして消えたのか数日でわからなくなりました。
型取り続編へ