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2012年7月 8日 (日)

漁船 タツ 取り付け作業の実際

うちのサイトへ タツ で検索して来られる方が結構いらっしゃるので

思いつくまま 覚えてるかぎりのことを書いてみます

 

ロープをかけるフック、箱はあらかじめサイズを決めて鉄工所で作ってもらいます

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タツ本体はクスの木をステンレスのボックスより少し大きめに製材所で挽いてもらいます

船長10mぐらいの漁船だとタツの長さは、

船底まで通しても2mくらいで収まるでしょう

この船ではキャビンとハッチの間に取り付けるしかなくて 位置決めに余裕がある船だと 

もう少し、ともよりに設置しますが、 当然、ラダーよりも前につけた方が舵効きはいいです

デッキに開ける穴位置が決まったら 

船底の状態もよく確認して施工が難しくならないか検討します

ハッチなどが遠くに離れていたりして、船底のどこにタツが立つのかわかりにくいときは

デッキに12mmくらいの穴をあけて 糸を垂らせば間違いありません

もし、そこでは作業困難なとき 位置を大きくずらした方がいい場合 

12mmくらいの穴だと ガラスマットを3枚ほど貼れば防水も出来 

強度的にも問題ありません

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穴あけの位置が決まったら デッキに墨つけは クスの外径より前後左右3mmくらいづつ 

大きく穴を開けるようにつけ ジグソーなどで墨を残して切ります 

あまりに穴が大きいと仮止めが面倒になり 

小さいと入りませんし微妙な位置が出せません 穴が開いたら 

タツを入れてみます 前後の傾きは タツのとも側がデッキと直角か、ともへ倒れ気味のほうが見た目はよくなります 左右の傾きは デッキに指し金を当てて倒れを見ますが 

デッキにはキャンバー(R カーブ)がついてるので 船に対して真っ直ぐ立っていても 

指し金を当てると 左右共 上開きになります 倒れを決めたら 

タツから遠くに離れて 立ち具合をよく見ます 目で見ておかしかったら 船か自分が悪いのです

微調整は 一人が船底に入って上にいる人が合図をしてハンマーで叩くとよく決まります  

傾きが良ければ 船底に墨をします たいていの船のセンターライン上にロンジが通ってるので

タツの前後にマジックで墨をして ロンジの高さ、幅分を タツに映し取り 

あとでコの字に欠きます

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ロンジが当たる部分を欠いだら うまく収まるか タツを置いてみます

どこかきつい部分があれば マジックで書いて 削りますが 何回も抜き差しするのは大変なので 少し緩めに削って 取り付けのときにパテを入れてもいいのですが ゆるくなりすぎないように削ります

だからといって叩いて入れるほどきつく仕上げると FRPはやわらかいのでデッキか船底の形状がゆがみます 加工がすべて終わり 

OKとなったら 船底部分のタツがくる位置、デッキに当たる部分、外と内に マジックで墨を入れてタツを抜き FRPを貼るところ全部、 デッキの上と裏、タツがデッキに当たる部分 

船底部分を サンディングします

鉄則は 船底の 水分、油分はよくふき取っておくことです 水だけじゃなく 

人間の汗がつくとその部分は固まったようでも 硬化不良を起こしています 

そういう細かな作業の積み重ねが施工の善し悪し、船の強度、寿命の長さに繋がると習いました 時化でも壊れず 安心して乗れる船が いい船だと思っています

サンディングで出た粉をそのままにしておければ樹脂が粉の上に落ちて固まったあと簡単にとれます

作業スペースが狭くて寝そべってやるときは 掃除機できれいに吸って ボロ毛布を敷けば体が痛くありません

サンディングと清掃が済めば いよいよ本付けです タツは前後方向が長い長方形にしてるので 前後を間違えないように挿して 

マジックの墨に合わせて 仮止めをします 墨も間違いない あとはガラスを貼るだけ!

となれば FRPの材料、ローラーとタルクを準備して タツを持ち上げておいて 

タルクで作ったパテを船底のロンジに、多すぎず 少なすぎず塗ります

パテを入れてタツを立てるとパテの厚みだけ上がってるので 

デッキ上からハンマーで軽くたたいてなじませます はみ出たパテは指でなでるときれいな内Rになり ガラスマットも貼りやすく 水止めも確実にできます

ここで デッキに開けた穴には5mmくらいの余裕があるので

必ず、タツを デッキの切り口の、とも側に当てます ここに隙間が開いてると 船を曳航するときなどの衝撃で積層したガラスが剥離しやすくなります

ですのでデッキの切り口のすきま おもて側に 木の矢を打ち込んで 動かないようにして積層すれば万全です  

そして パテが固まらないうちに 積層します 

パテがあまってればほかのすきまにも入れておきます

で、積層ですが しんどいとこから始めればあとは楽になっていくので

私なら デッキの裏から貼り 次に船底を貼ります デッキの上から 切り口にテープで目張りをしてパテがはみでないようにしておき そのままデッキ裏にパテを入れて積層します

先に船底を貼ると 踏んだり 樹脂がポタポタと落ちたのをまた拭くようになります

換気装置がないときには 掃除機の電源を入れてホースを突っ込んでおけば 少しは楽ですが、

使い捨ての防毒マスクは必須です  

積層を始める時間によりますが 昼食の時間にかかると思えば 樹脂を溶く量を考えて 

幅の狭いマットでパテだけを押えてから 食事休憩します

また、硬化剤の量を調整すれば 作業中に固まったり 

休憩後に固まってなくて 次の作業に移れなくなるということも防げます

もしも、樹脂が大量にあまったときは その日まだ 積層作業があれば 

新しい樹脂を混ぜて 樹脂1kgに対して硬化剤を2cc以下の割合にしておけば 

その日のうちは硬化時間を遅らせます

作業がなければ パテを作って補修に使うか あきらめて捨てるしかありません

捨てるときも 底の広い複数の容器に薄く樹脂を流して固めます

容器に5cmくらいためて硬化させると 夏期は発熱がひどくて日光でも当たると発火するので危険です

船底、デッキ裏を積層するときですが デッキ上に段ボールを敷いて 

ガラスをテープ状に切ったものを長さ30cmくらいに切り マットを置いて樹脂を塗り、

その上にロービングを置いて塗り、またその上にマットを置いて塗り、3枚重ねたのを作ってもらい 

船内に手渡ししてもらうと作業が楽にできます 長ければ長さを伝えて上で切ってもらいます

ロービングのはみだしを押えるときは マットだけ2枚塗ってや! と伝えます  

これをひとりで 塗って 持って降りて貼って 脱泡してまたデッキに上がって 塗って とかしてたら 気がくるっちゃいますw 

二人でやるのが楽です 船内の積層が終われば あとはデッキの上での作業です 

これはもう 楽勝でしょう 仮止めの矢が抜ければ抜いて 抜くとまずいときは デッキのツラで切ります デッキにはみでたパテが固まっていたら ノミで突くかサンディングします

で、もう一度きれいにパテを入れて指でならし ガラスの積層をします 段ボールの上で塗ってタツに貼ってもいいのですが ここは人の目に触れるところなので 

ガラスは現場合わせで切って 樹脂を塗り脱泡したほうが仕上がりがきれいです ロービングはハサミで切りますが マットは手でちぎったほうが段差にならなく 自然になじみます

体勢も楽なので 樹脂も足りないくらいに溶いて 

最後は 下のガラスの樹脂を上のガラスに染み込ませるようにローラーを使います

それでもローラーを洗う時に手でしごけば 樹脂がでてきます

造船所曰く それぐらいやって 当然と言われました

樹脂が硬化後 手や体をけがしないように 積層した部分を軽くサンディングして 塗装しますが 塗装はその日の最後にして 翌日来たら乾いてて、踏んで歩けるのが理想的です  

最後にステンレスの箱をクスのタツにかぶせます 横方向はクスのほうが大きいので 段付きにした部分は丸く面を取っています 細工は硬めにして 叩いて入れます もし ゆるくなったときは パテを薄く入れて 横から通しボルトで縫います

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ボックスの様子は下図をみてください 10mくらいの船ですが 

ロープをかけるフックは可動式にしています

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必要な材料は クスの木 ガラスマット ロービングクロス ポリエステル樹脂 硬化剤 タルク アセトン 道具は ドリル ジグソー メジャー 指し金 サンダー 断ちハサミ バケツ ローラー ゴム手 段ボールなどです  

作業した時期はたまたま 夏にやりましたが 冬場は気温があがらなくて 完全硬化まで非常に時間がかかるので避けたほうがいいです

別の船にも取り付けましたが、それも真夏に作業して 積層した翌日には 起重機を積んだ船を曳航しても大丈夫だったらしく 25年たった今、クスの木も乾燥しきって収縮しデッキのFRPとは離れて、手で押すと動きますが、まだ現役で走っています  

ガラスの積層枚数は マット、ロービング、マットの3枚を1組として 

全体を2組以上 重なる部分があっても、ロービングを入れて9枚以上の積層が必要だと思います 貼りシロは木部、FRP部分共10cm以上は貼った方がいいようです

FRPの接着強度は 広い貼り面積で 剥離させないためには積層枚数を増やして厚みを出すのだと習いました  

長文にもかかわらず読んでいただきありがとうございます