自作艇原図を描いてみる。ステップ1
造船に限らず建築業などに携わっても、出来上がる物は
机の上で紙に書かれた設計図より大きいものがほとんどですので、
実物の船は壮大なスケールでイメージして造り上げましょう。記事の後半、大きく話がそれて行くのはいつも通り。
場所や道具など本物の再現は難しいものがあるので、画像を使って原図作業の実際を書いていきます。
下図はベニヤ板4枚にしていますが、長さや幅に応じて必要な枚数が変わります。
板の並べ方も一例としてこれにこだわらず、5枚目は縦方向に並べてもいいので、
無駄の無い買い物と手間を省きましょう。
板の隙間やズレ、たわみがないように敷いたら1枚ずつ釘を打ち込んで止めていきます。
まず最初に基準となる墨を敷いたベニヤ板いっぱいに1本打ちます。
図にあるように、端から120mm離して打つ理由は、寸法を拾うとき便利なように 100mmピッチのマスを書くので20mm余裕を持たせておけば、きわどいところが出てきても余裕で書くことができます。
ですが、取り掛かる前には熟考を重ねて、これで間違いない。これで行こう。と納得確信が持ててから 次の工程に入るようにしましょう。
でないと途中でひとマス足りないのに気づいて そのまま板を足せればいいけれど、スペースが無く板を全部めくって打ち変えるとか 私は経験者です。
で、1本の墨は、極論で言えばどうにでも、どこにでも打てるので問題は?それと直角に交わる直線の引き方です。
ベニヤの加工精度がいいので場所によっては板の直角を利用できますが、現尺図で使ってはいけません。
正確さを確認して使ってもいいのですが、その確認する手間で正確な垂線を描くべきです。
それはたぶんナポレオンの時代以前からあると思う方法。
いわゆる345 サン・シー・ゴを使います。
特に建設業で知らないと言う人がいたら間違いなくその人はモグリです。
三角定規のひとつでもあります。
3の倍数を暗算で簡単にするために500mmX3とか600mmX3、原図場で取れる長さも考えに入れます。
実際書くときはどうするか?メジャーで計ってしるしをする?それでは信憑性に欠けるので
ここはやはりコンパスを使います。 コンパスも作らなくてはいけません。
具体的な例をあげると、下図のように細長い板を用意。
中心に挿す釘を打ち、倍数で計算した距離を記して鉛筆が引っかかるように鋸でカット。
現場のイメージをノートで再現。
直線上に4の倍数の長さA-Cを記し、A-B、3の倍数。B-C、5の倍数をコンパスで書いて 交わった点Bへ点A、Cを結べば直角三角形の出来上がりです。
エンジン取り付け用ボルト穴あけもこの方法でベニヤに穴あけ位置を書いて、
エンジンベッドにベニヤを乗せて 3mmくらいのキリで下穴をあけて徐々に大きいキリであけて仕上げます。
でもここで差し金を使ってはいけません。
買ってきたばかりの新品でも却下。 あなたは500mmと250mmを延長した直角の精度を信用できますか?
そして直角の確認方法は?最初に引いた直線上の反対側で もうひとつサン・シー・ゴで書いてみてください。
見た目は三角がふたつ並んで屋根型になります。
点Bが同じところにありますか?
次に、100mmピッチでマス目を入れていきますが、全部サン・シー・ゴで書く必要はなく平行線でかまいません。
しかし、ここでも守ることがあるので下図を見てください。
図の上、ものさしの端から測らずに図の下のように100mmのところから始めて200mm-300mmとそのときに書けるだけ同時に記します。
1mの差しより5mのメジャーを引き伸ばして一気に書きましょう。
一番やってはいけないことは、100mm計ってそこから100mm計るデバイダのような使い方はもってのほかで、 誤差論のなんとか、だったと思いますが
10回ほど繰り返して1mになってるか確かめてみればすぐに理解できるでしょう。
ビックリするくらい違います。
下図をベニヤに描いたものだと思ってみてください。
船底にカーブをつけるのなら55000Rと書いてる紙きれのようにベニヤ板を切ってゲージを作れば、 キールとチャイン内側の2点を結ぶだけなので作業が楽になります。
55000Rは適当な数値なので無視してください。
電卓で計算したカーブゲージならちゃんと数値をマジックで書いておきましょう。
何Rかわからなくなったあとで確認することは無理だと思います。
長さ方向の原図を書くときはこんな感じです。
船の幅方向は100mmのマスを入れてもいいのですが、長さ方向はステーションの位置だけを書けばいいので ステーションの距離を500mmとか700mmとキリのいい寸法にしておきます。
ちなみに50フィートのボート図面だと1300mmくらいで指示されてて、
バウのRがきついところは その半分(650mmピッチ)、真ん中にもう1本入っているので、
その分作る木枠も増えます。
バテンを通すとき、バテンに直接釘を打ってもいいのですが、それよりも 打った釘に当てて曲げた方がバテンも痛まないし、スムーズに曲がり少しならずらすこともできるからです。
釘にみたてたビス4本だけでもポイントを通って曲がりますが、より遠くまでスムーズなカーブを描くことを 心がけるのがフェアリングの理想なので、R外側、両端の赤いピンのところに釘を増やすと それまでより美しいカーブが産まれます。
がしかし、R内側の赤いピン2つのあたりに釘を増やさないと 両端が直線的になってきます。
ちょっと書き方がへたなんですが、
下図のようにバテンを素直にあててもポイントを通らないことがあり 初心者にありがちな行動は、ついあわせちゃうんです。
そうして書かれた線は下図のようになります。
書き間違いで大きくズレたところ以外は、それにこだわらないでスムーズなほうを選ぶべきです。オミット(省略といいます)。
船の前から後ろまで1本で届くバテンは中々ありません。
で、線をつなぐときなんですが、 下図のように、前の線とバテンの重なった部分に注目。
半分くらいでは不十分。
下図のよう よくあわせてから書くようにすればミスが減り、こまめに確認する習慣がつき
ミスに気づきやすくなると思います。
このように大きくオーバーラップさせて書いても安心してはいけません。
日本語で言う、通りを見る。とは、前から見てみる。
それでよくても、後ろからも見てみる。
目の高さ、見る角度を変えて、しばらくたった後、またもう一度見て見る。
更には他の人にも見てもらって感想を聞いてみる。
飛び出てる、引っ込んでる そんなところがあったらその近くの釘を抜いて0.2mmくらい動いただけだとしても もう一度、通りを見てみましょう。
おそらく、これで誰にも文句をつけられることが無い美しいカーブになってるはずです。
フェアリングのフェアはフェアレディのフェアと同じで、
美しいとか整ったという意味があり、
船のフェアリングに正統という意味は当てはめないと私は思っています。