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2012年2月22日 (水)

ワンオフFRP自作艇を1年かけて製作|7.2mの夢を形にした第4号艇

FRPボート作りもいよいよ4隻目。

ディンギーから始まった自作艇製作ですが、この船は私にとって集大成とも言える一艇です。

約20年前、勤務していた造船所で休憩時間や休日を利用し、延べ1年をかけて完成させました。

完成したのは、全長7.2mのワンオフFRP自作艇です。

File0001sunset_1300x205

  

設計は実艇を採寸して一から数値化

元になったのは、会社の社長が製作した全長約6mのボート。

陸に揚げてひっくり返し、船底・外板・キール・ハルだけをベニヤで型取りしました。

工場の床へ現尺図を書き、

  • キールを5cm下げる
  • フェアリングを行う
  • 全体を寸法化する

という作業を経て、自分仕様へ設計変更。

今なら3D CADでやるような作業ですが、当時はすべて手作業。

言わば"完全アナログのデジタル化"でした。


工場の大型メス型を作業場として利用

建造スペースは12mハル用の巨大メス型の中。

さらに上にはデッキ用メス型が載っていたため、天然の屋根代わりになっていました。

メス型のストライプへ垂木を渡すと、ほぼ水平が出ていたため基準として利用。

決めていたステーション位置を罫書きし、製作したフレームを順番に並べていきます。

メス型と同じ向きなので、並んだフレームはまるでお椀を伏せたような形になります。


バテンを当てながら船型を作る

フレームを立てたら、バテンを当てて滑らかなラインになるよう確認。

船作りで最も重要な工程の一つです。

バテンのラインが決まれば、外板の型取りへ進みます。

作業スペースに余裕があったことと、社長から

「せっかくなら1m伸ばしたらどうだ。」

とアドバイスをいただき、

元の6m艇から約1m延長。

最終的な登録長は7.2mになりました。


ステッチ&グルー工法をFRPで応用

この船で採用したのはステッチ&グルー工法

本来は合板艇で使われる工法ですが、FRPで応用しています。

外板展開図を薄いベニヤへ写し、

FRP定盤に墨出し。

さらにマスキングテープで切断ラインを作り、

必要な部分だけ5プライ積層しました。

  • シアライン~チャイン
  • チャイン~キール

左右合わせて4枚のFRP外板を製作。

トランサムは単板を切り出し、好みのRを付けた状態でさらに積層し、曲面を固定しています。

完成した5枚のパネルを切り出し、

メス型へぴったり収まるよう調整。

ビスやグルーガンで仮固定し、

継ぎ目へガラスクロステープを積層して一体化しました。

作業性を優先し、トランサムだけは最後に固定しています。


内部構造もすべてオリジナル

硬化後は前後へロンジを通し、

隔壁(バルクヘッド)は

  • イケス
  • エンジンルーム
  • 燃料タンク

との兼ね合いを考えて配置。

エンジンベッドは厚い合板を立ててFRPで巻き込み固定し、

その上へ鉄アングルをボルト止めして搭載しました。

デッキはバルクヘッドへ桟を通し、

船尾の広い部分はFRP製の受けを作って支持。

FRP単板デッキを載せ、

FRPテープで接合・防水処理しています。


ハッチや燃料タンクまで自作

イケスと物入れのハッチは、

知り合いからFRPメス型を借りて製作。

表面はノンスリップ仕様です。

デッキ全体もノンスリップ塗料を刷毛塗りで仕上げました。

燃料タンクもFRPで自作。

配管用エア抜き金具は真鍮をロウ付けして製作しています。

ラダーのみ中古品を使用しました。


エンジンはヤンマー3GM

搭載したエンジンは、

会社が下取りした**ヤンマー**製3GMディーゼル。

プロペラ・シャフトブラケットは特注品。

スタンチューブ内径は35mmですが、

3GMカップリングには35mm規格が無かったため、

プロペラシャフトは段付き加工で製作してもらいました。

プロペラ径やピッチも、

エンジン馬力・ギヤ比・水線長を基に計算してもらっています。

操舵席・エンジンボックス・スターンのクリートには花梨材を使用しました。

File0001engbox300x189

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完成前の1か月は休暇を取って追い込み

完成直前の約1か月は休暇を取り、

毎日朝から晩まで製作。

  • エンジン搭載
  • 芯出し
  • 船体全塗装
  • 試運転
  • 喫水確認

まで一気に進めました。

喫水線が確定してから、

2色のライン塗装。

その後、

艤装や細かな調整は仕事が終わってから夜遅くまで続けました。


忘れられない進水式

最後は船底塗料を塗って完成。

進水式の日は仕事を早めに切り上げ、

社長をはじめ従業員の皆さんが集まって盛大に祝ってくださいました。

クレーンでも降ろせるサイズでしたが、

正式にレール付き船台を使って進水。

塩とお神酒を供え、

地元のしきたりどおり沖を3周してから桟橋へ戻りました。

その後はささやかなパーティー。

美味しいお酒をいただき、

社長から思いがけないご祝儀までいただいたことも忘れられません。

Estreia300x206

船名「エストレイア」

当時の全体像です。

船名は**「エストレイア(Estreia)」**。

ポルトガル語で**「デビュー」**という意味を持っています。

進水後はトラブルもなく、

一度だけこの船で自宅まで帰ったことがあります。

片道約30分。

予備燃料を積み込み、

少し緊張しながら往復しました。

排気音だけ聞けば40ノットくらい出そうな勢いですが、

実際の巡航速度は体感で約10ノットほど。

夜、仕事が終わってから作業の手を止め、

仲の良いお客さんと船を眺めながら遅くまで話をした時間も、今では大切な思い出です。


JCI検査も取得

この船はJCI(日本小型船舶検査機構)の検査も取得済み。

造船所としての実績があったため、

通常必要となる強度試験は免除されました。

登録長は7.2m。

定員は残念ながら覚えていませんが、

自分の理想を詰め込んだ、世界に一隻だけのワンオフFRP自作艇となりました。

時間も手間もかかりましたが、それ以上に多くの経験と思い出を与えてくれた、私にとって特別な一艇です。

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